「LINK」3

「―――ッ!」

 怒りのあまり二の句が告げず、無言で自部の部屋に戻りベッドに倒れこむクロード。

(レオンの奴・・・、こっちが気をきかしてやってるって言うのに・・・)

 体を起こしてがしがしと金髪をかきむしる。ポケットからシガレットケースを取り出し、スティックに点火する。流煙の組成が無害になっても、このチープな形式は大昔から変わらない。ただ不定形に広がり、消えていく煙を眺める。レオンの気持ちが、ほとほとクロードにはわかりかねた。

「早まったかな・・・」

 二人の関係が決定的になったのは、エルリア大陸の浜辺に打ち上げられて二人きりになった時だった。

  2

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・」

「駄目だレオン、休むな!」

「だって・・・も・・・無理・・・」

「走りつづけるんだ!」

 二人は魔物の群れから逃げていた。

 他に流れ着いた者を探すのはいいが、今いる場所は敵の本拠、エルリア大陸なのであある。

(これもソーサリーグローブの影響、か・・・)

 モンスターの凶暴化、加えて二人きり・・・とはいってもレオンは未だショックが抜けきらず戦力にはならない。実質クロードが一人でレオンを守りつつ闘っている状況だった。しかしそれも、限界に近づいていた。クロードはもはや満身創痍であった。緊張と消耗の連続。満足に休息する事もままならず、いつ倒れてもおかしくはなかった。ただ、クロードの上着のすそをつかむ小さな震える手が、心配そうにクロードの顔を見上げるおびえた目が、彼を奮い立たせた。これだけは譲れない。この子を守れなくては今までの自分を全て否定されてしまう。そんな気がした。

 今、大きな魔物の群れの接近を知った彼らは、全力で回避すべく森の中を駆けていた・・・が、しかし。

「レオン、あの大木を背にしてじっとしてろ・・・」

「え・・・」

 既に囲まれている。クロードはレオンを背に隠すようにして立ち、剣を抜いた。腕にめぐる血流の熱さを感じる。アドレナリンが一気に体中を駆け巡った。

「ぉおおおおぉぉおおおっ!!」

 一斉に現れ、襲い掛かる魔物たち。今までにない数。今までにない勢い。しかしクロードはためらわなかった。彼はさながら鬼と化していた。近づく魔物を片端から切り伏せ、蹴倒す。獲物を狩るものの動きで次から次へと屠り、なぎ倒す。自らの血と返り血に染まり、クロードは真っ赤な鬼神であった。周囲はむせ返るような血の匂いがたちこめ、レオンは必死に吐き気をこらえていた。

「うわああぁ、お兄ちゃん!」

 その時一体のひときわ大きな魔物がレオンに近づき始めた。二足で歩くその威圧を放つ姿は、熊を思わせた。クロードは瞬間的にレオンの前に立ちはだかり、跳び上がる勢いのままに魔物の体を斬り上げた。

(――浅い!)

 魔物の巨体は体勢を崩さず、宙に浮いたままの無防備なクロードの体をめがけて太い腕が振り下ろされる――

「おにぃいいいちゃぁああああんっつ――!」「まだだァああああッ!!!」

 レオンがその直後の惨劇を予想して目を覆おうとしたその時、クロードの振り下ろした剣が魔物の体を切り裂いた。

 振り上げた剣の勢いを生かし振り下ろす二撃目につなげる剣技、双破斬。

 ズウウ――――ン・・・

 地響きを上げて倒れる魔物。その血でできた池の中に立ち上がるクロード。

「クロードお兄ちゃん!」

 レオンが駆け寄り、血に汚れるのもかまわずクロードの体にしがみつく。

「馬鹿ぁ・・・本当に死んじゃうかと思ったんだからぁ・・・」

「レオン・・・。大丈夫だ、大丈夫だから残りを片付けるまで、あとちょっと待っててくれな」

 ボス的存在を潰された群れにはもはや先ほどの勢いはなかった。しかしそれでもまだ闘う姿勢を示すものもある。クロードは血に滑る剣の柄を握り直した。

「わあっ!」

「!?」

 血に足を滑らせたレオンを狙って、一匹の魔物が突進をかける。振り向いたクロードは体勢が悪く、今度は両者の間に割って入れない。

「くそっ―――!」

 ジャキイィン!

 魔物の爪が閃く。レオンを抱き寄せて庇ったクロードは、レオンを抱きしめたままはね飛ばされた。そして転がる先には、地面がなかった。

「わああああああっ―――」

(レオン―――)

 クロードは薄れ行く意識の中、レオンを体全体で庇うようにしながら、崖の下へと落ちていった。



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