BAD PARTY「そんな気持ちはもう残っていないと思っていた」3
ハァハァ、ハァハァ・・・
シルクは、走っていた。というより、へばっていた。
朝起きても宿にルゥザの姿が無かった。そのこと自体は別に心配は無かった。シルクと違って、ルゥザは自分でしたい事をしたい時にしたいようにでき、自分の身も自分で守れた。しかし、シルクには一つの懸念があった。昨日の魔法使い、彼のところへ行ったのではないかと考えたのである。
(Bランク以上のマジックアイテムが必要なのは僕なのに・・・駄目だよ、ルゥザさん、危ない事しちゃ、嫌だよ・・・)
あの二人が戦えば騒ぎになるはずである。それがないということは、残るは・・・
「うああああああっ!」
シルクは、街の入り口に向かって全力で駆け出した。
「ロック・ビュレット!」
岩の礫がルゥザに襲いかかろうとした時、二人に向かって走ってくる人影があった。
「ルゥザさあん!やめてえっ!」
(昨日の・・・。仲間か。しかしなぜ一度にかかってこない?)
一瞬思考に捕らわれたが、シンナはすぐに目の前の敵に集中を戻した。魔法の発動に構わずに突っ込んでくるルゥザ。しかし間に合わない。一瞬後には砕けた武器とともに、ルゥザがぼろきれのように倒れているはずであった。
「きぁああああっ!」
駆けつけたシルクが悲鳴をあげる。
「ゆるぃんだよ!」
ルゥザが武器を掲げるとそれは発光し、先端に巻かれていた布が千切れ飛び中から光を放ったままの刃が現れた。シンナが杖だと思っていたものは実はポールアクスだった。
「オラアッ!」
ルゥザが武器を振り下ろすと、岩の弾丸は弾き飛ばされ、刃が地面に達すると爆発が起こった。
(馬鹿な――くそっ!)
正面から爆風を受け体制を崩すシンナ。ルゥザはそのままとどめを刺すべく突進する。
「駄目ぇぇぇぇぇっ!」
ルゥザがシンナに武器を振り下ろそうとした時、シルクが両腕を広げて二人の間に割って入ろうとした。
(ばかやろ――)
(なに――)
「きゃあっ!?」
しかしシルクは抉れた大地に足をとられ―――
ガイン!
ポールアクスの柄の部分の一撃を頭に受け、気絶した。