「B Meets・・・」3

「うっ、うっ・・・、ウチ、このまま村に帰るわけにはいかないのに・・・んくっ、ふえぇ・・・」

 泣き崩れる少女・・・と見紛う少年を目前にし、カイは罪悪感に苛まれ、途方に暮れていた。

 確かに外見から想像していたよりははるかに強かった。少女・・・のような少年のヨーヨーを操るバトルスタイルは未だかつて見たことが無いもので正直戸惑った。そして何より――

「ロジャー頑張ってっ!」

【命を無駄にするな・・・】

 ブオウウン!ガキィィィン!

(ロジャーって誰だ――!!このクマの事か!?)

 ヨーヨーが突然クマのぬいぐるみになって襲いかかってきた時には対応に困った。かわいい見た目に反して凶悪な攻撃の数々。この若さで末恐ろしいものがある。しかしやはりカイにはかなわなかった。ソル=バッドガイ。あの男を打ち倒すべく彼も修練を重ねてきたのだ。

 ――それでも。鍛え上げた技の数々も泣いた子供を相手にしては無力であった。

「えぐっ、・・・えうぅ、えぇぇ・・・」

 少女・・・にしか見えない少年は戦いで壊れてしまったヨーヨーを抱えて泣きじゃくっている。カイはハンカチを差し出し、努めて優しく話しかけた。

「さあ、もう涙を拭いて・・・。そうだ、君、名前はなんというんですか?」

「ひくんっ、・・・ブリ・・・ジット・・・」

「ブリジット君・・・私に負けた事はそんなに不名誉な事ではないはずですよ。君は十分に強かった」

「えっ、それじゃあ!」

 ブリジットはぱあっと顔をほころばせる。

「いえ、残念ながら先へ行かせることだけはできません。君の武器は壊れてしまったわけだし・・・その、責任は私にあるのですが・・・」

「そんなあ〜・・・」

 途端に意気消沈するブリジットを見て気の毒になり、思わずカイはそこまでして賞金首を追う理由を尋ねていた。

「ウチ、女の子として育てられたんですけど、男の子に戻りたいんです!そのためには、どうしても賞金首を捕まえて一人前にならなくちゃいけない・・・お願いです!どうか!どうかウチを行かせてください!」

 ブリジットは、服が汚れるのもかまわず手をつき、頭が地面に触れるほどにして頼み込んだ。

「ウチ、そのためならなんでもしますから!鼻からスパゲティ食べろって言われたらちょっと恥ずかしいけど我慢して食べます!逆立ちして町内一周しろって言われたら特訓してでもやりますから!」

(町内ってどこだ・・・)

「私はそんなことしてもらっても――」

「お願い!ウチが女の子である限りお父様もお母様も不幸なの!お兄様だってウチが完全に男の子になれば・・・」

 ブリジットは、困惑するカイの足にすがりつき悲痛なまでの叫びを上げる。カイはその必死なまなざしに見据えられ目をそらす事もできずに固まってしまう。



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