18禁(予定)グリラー小説です。ご注意を。
東方司令部襲撃事件。この際、紅蓮の錬金術師キンブリーの働きによって右足にウロボロスの紋章をもつ少年はグリードのもとへと連れ去られてしまった。
「おコトバ通り連れて来ましたよグリードさん。で、なんでこんな子供を欲しがったんですか?」
「紅蓮」の二つ名を持つ男・・・、元国家錬金術師キンブリーが、抱えてきた少年の身体を、無造作に床に放り出した。
散々暴れたので、キンブリーは少年を少し「おとなしく」させた。そのダメージから少年は、緩慢な動きで身を起こす。
「俺は強欲だからよ・・・どいつもこいつも欲しがってるのを見たら、黙っていられねえってワケよ」
「強欲」の名を冠するホムンクルス・グリードは、お決まりのセリフとともに語りだした。
グリードは左腕を掴んで強引に少年を宙吊りにする。少年は肩の痛みに顔をしかめる。
「まあそれは、半分冗談としてだな」
(半分は本気だったわけですか・・・)
キンブリーは苦笑する。この男、本当のところ何を考えているのか、一見わかりやすそうでいてなかなか底が見えない。
(おかげで退屈しなくてすみそうですがね・・・)
そんなキンブリーの内心を知ってか知らずか、グリードは続ける。
「俺はなんでも独り占めしようとする分、敵も多くてな。少しでも多く仲間が欲しいってこった」
「この、子供が・・・?」
キンブリーが眉をひそめる。
「こう見えてコイツは、俺と同じだからな」
「はなして、はなして〜っ!」
宙吊りにされたままグリードに眺められ居心地の悪さを感じたのか、少年は抵抗を始めた。無茶苦茶に動き回る少年をグリードは、不意に手を離して自由にしてやる。
「あぐっ!」
不意打ちで拘束を解かれ、少年は床に身を打ち付けた。しかし素早く猫の威嚇するような姿勢でグリードを睨み上げる。
少年は無意識のうちに「恐怖」を覚えていたのである。それは、目の前の男が彼の初めて見る「同族」であることに他ならなかった。東方司令部襲撃事件の時には、エンヴィーはその本性を隠しおおせていた。
よって今目の前にいるグリードが、彼が初めて目にする自分と同じホムンクルスだったわけだが、それはまだ彼のあずかり知らぬところであった。よって、今までに見たどの人間とも違う異質なものとして、少年の感覚はグリードを警戒し恐怖していたのである。
そして彼の本能は行動に出る。練成反応の光が生じ、床石の一部をえぐって左手と同化した少年が、グリードに殴りかかった。
「わあああ〜っ!」
ガッ!
一瞬、静まり返る室内。グリードの顔面にめりこんだままの少年の拳。
「・・・・・・」
「それじゃあ一回も殺せねえぜ」
バキッ!
グリードの裏拳が少年を弾き飛ばし、壁に叩きつけた。
「ああっ!痛いいっ!」
鼻の骨が折れたらしく、少年の鼻腔からボタボタと血が流れ出る。
「グリードさん?」
グリードの真意を測りかねたキンブリーが首を回すグリードを向いた時、その背後でまたも練成反応の光が生じる。
「覚醒はしてねえみたいだが、その錬金術の力・・・、そいつはおもしれえな」
少年は自力で負傷した鼻を修復したのだった。しかし、無我夢中だったために、流れ出た血液がうまく組み込めず皮膚の表面に混ざってしまったのが痛々しい。
「こいつはいい。何度壊しても治せるわけですか」
キンブリーが少年の首根っこを掴んで引き寄せた。
「さて・・・どこをふきとばしてあげましょうか」
邪悪な楽しみを思いついて妖しく輝く目を見て少年は震え上がる。
「ソイツはもう俺のもんだ。そいつの手も足も、勝手に壊すのは俺がゆるさねえ」
グリードが少年の身体を引き寄せ、キンブリーの魔手から奪い取る。
「たまには違う楽しみ方も試してみろよ、元軍人さんよ」
一寸、キンブリーの瞳に剣呑な火が灯る。
「俺は強欲だからな・・・、部下の力や命だけじゃ満足できねえ。精神(ココロ)も肉体(カラダ)も忠誠心も、すべて手に入れなきゃ気がすまねえんだよ」
「そういうことなら、仕方ありませんね・・・」
キンブリーは含みのある笑みで肩をすくめて見せた。
「すまねえな」
続く。どうなるラースたん!?